古くて新しい問題解決と発想のツール:QC手法の魅力

発想力や思考力は、凡人の自分にはあまり期待できない。」「斬新なアイデアや問題解決は頭のよい人のやることだ。」

こんな風に考えている方もおられるのではないでしょうか?

 

ところが、最近はそういうわけにもいかない状況になっています。

 

変化の激しい現代のビジネスでは、短いサイクルで新しいものを創出していく必要がありますし、それに関わる仕事もスピードを上げて改善、修正をしていく必要があります。

 

今、ビジネスパーソンに求められているのは、この発想力や思考力を使った問題解決の力です。発想力や思考力は限られた人だけのものではないのです。

本当の脳みその使い方って?!

あなたは「本当の脳みその使い方」を知っていますか?

 

ジャーナリストの行宗蒼一氏の著書「脳みそのほんとうの使い方 ビギナーズ編」によると、本当の脳みその使い方は、常識を疑い、自分のものの見方やアイデアに組み立て直すことであるとされています。

 

教科書の中身を覚えたり、仕事のやり方を覚えることも大切な頭使い方ではあります。

 

ですが、記憶力は年齢とともに衰えていくものです。

その一方で、創造する力は、経験が増えるに従い、高まるとされています。

 

様々な知識や経験をもとに、新しいアイデアを紡ぎ出すことこそ、一生使い続けることのできる脳みその使い方なのです。

工業化で生まれた発想・思考のツール

 

1940年代、第二次世界大戦の中で工業製品の品質を安定にするための考え方が提唱されました。この考え方が日本にわたり、日本で大きく発展しました。

 

この概念は「総合的品質管理」と言われ、「工業製品をつくる会社は、会社全体で製品やサービスの品質を高めましょう」という概念です。

 

品質管理とはとても堅くて地味な仕事に聞こえるのですが、実は創造性や発想が求められる活動なのです。

 

なぜなら、既存のやり方から生まれている品質の不良を改善するためには、これまでのやり方や考え方を捨て去り、新しい方法を組み立てる必要があるからです。

品質管理という活動には「脳みそのほんとうの使い方」が必要なのです。

 

品質管理には、だれでも品質改善に取り組めるようにするために、「QC手法」というツール(フレーム)があります。

 

数値データを扱うものは「QC7つ道具」と呼ばれます。一方で感覚的なものは言葉をデータとして扱うものは「新QC7つ道具」と呼ばれています。

 

この14のツール(フレーム)を上手に使いこなすことができれば、誰でも「脳みその本当の使い方」が実践できるものです。

QC手法を使い解決策を発想するビール会社のA君

ここでは、QC手法ツールとして、「散布図」、「フィッシュボーンダイヤグラム」「連関図」を使った新しい発想を生み出すプロセスをご紹介いたします。

STEP1:散布図から仮説を引き出す

散布図は非常に便利な図です。「売上-気温」、「クレーム数-生産ロット」などの関連のある(因果関係のある)数値データを縦軸と横軸でプロットした図です。

 

いま、ビール会社で飲食店向けビール担当営業マンのA君は、毎年夏には売り上げが伸びるビールが今年はあまり伸びない状況をなんとかしたいと考えているとします。

 

A君は、Aくんの営業エリアで最近はクラフトビール(地ビール)を扱う飲食店が増えているという情報を聞きました。さっそく、この影響がありそうか、散布図をつくってみることにしました。

「あ~、確かにちょっと去年と傾向が違うな~」

 

昨年の売上-クラフトビールの出店数と今年のそれを比較すると、確かにクラフトビール店が増えたときにビールの売上が昨年より落ちているように見えました。

飲食店への聞き取りからも、最近はクラフトビールの話題がお客さんの中に出ているようでした。

STEP2:原因の仮説を発想する

A君はクラフトビール店の出店増が売上に影響していそうだと気づきました。

それでは、どうしてお客さんはAくんのビールではなくクラフトビールを選んだのでしょうか?その原因を考えることにしました。

 

ここで使うツールがフィッシュボーンダイヤグラム。原因の洗い出しによく使います。

Aくんも早速ダイヤグラムの作成にとりかかりました。

 

Aくんは「味」「見た目」「売り方」に原因があるのではと考え、ダイヤグラムに書き込み、考えられる原因を深堀りすることにしました。

 

フィッシュボーンダイヤグラム
A君の描いたフィッシュボーンダイヤグラム

 

味はホップの効いたものが多いな」

「見た目は、飲食店ではジョッキではなく、おしゃれなグラスや変わった形のものを使っているな」

「売り方は、クラフトビールは、醸造家がちょっとカリスマ的な存在として雑誌などで取り上げられているものが多いな」

 

この分析から、A君は、A君のビールが売れない理由として次のような仮説を組み立てました。

 

<A君の仮説>

今年は昨年に比べクラフトビールを扱う店の開店数が非常に多い。クラフトビールはジョッキではなくおしゃれなグラスで提供されることが多く、日本にはなじみのないホップの香りが特徴的なものが流行っている。それに加え、作り手の醸造家がカリスマ的に取り上げられるものもあり、我々のビールにはないカッコよさが受けていると考えられる。

STEP3:解決策を発想する

さて、分析から仮説をつくったA君。仕事はこれだけで終わりではありません。解決策を考えないといけません。

 

STEP2で深堀りした要因の中でも、「醸造家のカリスマ化」に着目し、どうしたら自分たちのビールがクラフトビールより魅力的になるか、連関図を使って考えるすることにしました。

 

 

連関図
A君の作成した連関図

連関図は、発想ツールの一つでいわゆるマインドマップに似たツールです。

中心の言葉に関連する、連想される事柄や原因を書き出していきます。

 

「う~ん、やっぱり我が社の特徴は近代的な工場だな~。工場の品質の取り組みはどの会社もPRしているしな・・・。そうだ、近代的な工場を支える技術スタッフの日常をPRしてみよう。クラフトビールのカリスマ性とは違う、普通のサラリーマンのストーリーを押し出したら共感されるんじゃないか?」

 

こうして、A君は工場の技術スタッフを押し出したプロモーションの企画を策定することにしたのでした。

 

おわりに

いかがでしたか?

発想ツールを使うことで、非常にロジカルに解決策を作り出すことができる例をA君の例を用いて紹介しました。

 

QC手法にはこのほかにも11のツールがあります。今回は使いやすい3つとして「散布図」「フィッシュボーンダイヤグラム」「連関図」を紹介しました。

この3つだけでもだいぶん発想の幅が広がるはずです。

 

また別の記事で、残りを紹介していけたらと思います。


ロジカル思考や発想ツールで、仕事の課題を解決する手法については、パーソナルコーチング「ワークスタイルデザインLAB」のセッションを通してより実践的に身に着けられます。

 

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